理事長挨拶

理事長からのご挨拶

理事長 三宅達郎
一般社団法人 日本口腔衛生学会理事長
三宅達郎大阪歯科大学口腔衛生学講座 教授

2023年5月に開催された第72回日本口腔衛生学会総会終了をもって理事長の重責を担うこととなりました。歴代の理事長のお名前を拝見すると身のすくむ思いですが、諸問題に対して誠心誠意取組み、会員、そして国民の皆様の負託にお応えしたいと思っております。何卒よろしくお願いいたします。

本学会は、1952年に口腔衛生学会として発足(1980年に日本口腔衛生学会と改称)以来、先輩方の並々ならぬご尽力により、これまでフッ化物応用による齲蝕予防、歯周病予防、予防歯科臨床、禁煙対策など多数の輝かしい実績をあげてきました。しかし、歯科疾患の疾病構造が激変する中、我々は、そこに胡座をかくのではなく、次世代に向けた新しいビジョンを構築し、よき伝統を守りながらも、新しいチャレンジを試みる学会でありたいと思っております。

また、本学会の基本理念である「生涯28」を継承してまいります。「生涯28」は単に現在歯数を28歯にするというものではなく、健康な歯とともに健やかに生きるという歯科関係者や国民の発想の転換を促すものであり、疾病を中心とした発想から健康を中心とした発想への転換をうまく表した理念だと思います。

本学会は、健康からあらゆる口腔疾患まで幅広い領域を網羅し、基礎研究、疫学、臨床研究、健康政策研究など様々な研究アプローチが存在する、言わばなんでも揃う歯学の総合デパートであり、かつ歯学を俯瞰的に見る学会でもあります。「cool head but warm heart」は、経済学者のアルフレッド・マーシャルの有名な言葉ですが、私は、基礎医学が中心の「衛生学」がcool head、応用医学が中心の「公衆衛生学」がwarm heartだと思っております。この2つのマインドを併せ持つのが日本口腔衛生学会です。冷静な頭脳によって分析した成果を、温かい心をもって全ての国民に働きかけ、その健康を支えるという点で、他の歯科学会とは社会に対する立ち位置が大きく異なります。これらの特性を最大限に活かすことが学会を活性化し、国民の皆様の健康につながっていくと信じています。

本学会には、研究だけでなく、行政、地域保健、臨床、教育等にご尽力いただいている多様かつ有能な人材が多数おられ、現在、委員会活動等を通じて難問に対応していただいております。基礎研究や疫学研究がパブリックヘルスと交差する独特の学問領域に魅せられた者同士が縁を感じながら、よりよい口腔保健を目指していく、そのような学会が日本口腔衛生学会だと思います。

次世代会員の育成、日本歯科専門医機構による歯科公衆衛生専門医の認証、他学会との連携強化、女性会員活躍の環境づくり、学術大会のさらなる充実など問題は山積ですが、焦らず着実に解決し、会員が誇れる学会、国民の皆様から信頼される学会となれるよう努めてまいります。

ご協力のほど、心よりお願い申し上げます。