トップページ > 学会紹介
理事長からのご挨拶

この度,日本口腔衛生学会の名誉ある理事長職に就任することを承認していただきましたことに対し,会員のみなさまに厚くお礼申し上げますとともに,その重責に対し,身が引き締まる思いであります.
現在の日本の歯科界は低迷し,産・官・学・歯科医師会がその対応に,苦慮しているのが現状です.一方,人々の口腔保健状態は改善され,健康な口腔を持つ人が増加してきていることも事実であります.我々歯科界の人間は,この一見矛盾する状況をどのように認識すべきなのでしょうか.今回の東日本大震災で明らかになったエネルギー政策のうちの原子力施策の失敗を目の当たりにすると,戦後の口腔衛生対策がいかに成功した事例であるのかを対極に位置する事柄として実感すべきであると思います.疾患構造,社会構造が,また住民に健康志向が向上し,健康感が変化してきている中で,歯科医学・歯科医療が社会のニーズと乖離してきており,このことが歯科界の認知度の低下を招いている一因かもしれません.
日本口腔衛生学会がこの口腔保健の改善に果たしてきた役割は,フィロソフィー,理論,技術,社会保健制度などに対しscience and artの面で,非常に大きかったのは明らかであります.口腔疾患の予防や口腔の健康増進は,まさしく我々の領域であり,現在の新たな状況はこの学会に新たな課題を突き付けています.パスカルは,「哲学をバカにすることが,哲学をすることである」と述べています.新たな口腔保健状態に対応するために,疾患対応の口腔保健から,口腔の健康の視点から,未病検出,予測性,口腔保健管理を含んだ健康創造的口腔保健システムの構築に取り組む必要があると考えております.
このような背景の中,日本口腔衛生学会の私の理事長任期2年の間に,進めたいことは,大きく3つあります.
- まず,10年後を見据えた新たな口腔保健システムの構築であります.これまでの歯科界は歯科疾患抑制の目標に取り組んできた結果,現在12歳児のDMFTが1本になったと予測されるように,健康な口腔を持つ人が増えてきている状況にあります.この健康な口腔保有者増加の状況に対応するためには,進むべき目標の変更をする必要があります.目標のないところに,事業の成功はないと思います.歯科界には,8020というシンボリックな標語があります.現在の疫学データでは,この目標も20から25年後に達成されると予測されます.12歳児DMFT=1本へのう蝕減少,8020への喪失歯減少の理由に対し学会としての見解を示す必要もあります.このような解釈が,次の新しいシステム構築には,必要になります.すなわち,サイエンスに基づく口腔保健システムが必要であり,そのためには本学会の学術委員会(研究課題別プロジェクトチームによる研究推進)の充実が必要であります.さらには,Evidence-Based, Lifestyle-Oriented and Public-Oriented Dentistryを基礎にしたシステムでなければと思っております.このシステムの構築が歯科界の混迷をブレイクスルーするきっかけ(例えば,新たな口腔保健システムに対応した歯学部教育の改革,歯科保険制度の改変など)になり,これを進めることが学会のできる最大の責務であると考えています.
- 学会員,住民と学会とのコミュニケーションの充実を図ることも必要であります.口腔保健の時代を迎えているにもかかわらず,口腔衛生学会の顔が見えないという声を耳にすることがあります.また,ICT(Information and Communication Technology)の進展により,疾患,患者,医療従事者が簡単に国境を超える時代を迎えております.これらのことに対応するため,本学会の組織の再構築,スリム化,学会委員会・事業のDisclosure, Accountability,地域別口腔衛生学会におけるワークショップ(例えばICDAS)の開催,認定医による口腔保健データのデータ・バンクの作成,科学的学会声明(Policy Scientific Statement)の作成などを進めていきたいと思います.このことにより,学会員の積極的学会参加による学会への理解,住民の口腔保健に対する信頼が高まり,新たな口腔保健システムの浸透,健康保険制度の醸成の一歩になるものと考えます.
- 海外口腔衛生・予防歯科学会との学術的交流の促進,他学会,関連職種との連携の推進であります.過日,非感染性疾患(NCD;Non-Communicable Disease)の国連のサミットの5つの疾患の一つに歯科疾患が含まれたというニュースが届きました.5つのNCDとは,ガン,糖尿病,心疾患,呼吸器系疾患,それに歯科疾患であります.これら他の疾患と同列に歯科疾患が並んだ際,歯科から何が発信できるのかと考えてしまいます.また,FDIでは,GCI(Global Caries Initiative)で2020年の齲蝕抑制を目標に掲げた活動を行い,その中で齲蝕の分類について議論されており,さらにGOHA(Global Oral Health Alliance)の活動が展開されております.日本口腔衛生学会として,韓国の予防歯科学会との協力関係を深めてきておりますが,今後はその他のアジアの予防歯科関係団体との連携も視野に入れて,活動を広めていく必要があります.日本が持っている知的資産の普及と海外からの優れた知的資産の導入であります.また,国内では,「口腔ケア」を初めとして,他領域と被る内容の混乱が多数みられるようになってきており,この解決のためにも,連携を深めていく必要があると考えています.
日本口腔衛生学会が係わる必要性がある課題は多数あり,多様であります.新たなことに取り組むには,大変なエネルギーがいります.ラテン語の格言,「Vita brevis, ars longa (人生は短い,医術は長い)」にあるように,医術を習得するには長い期間がかかります.日本口腔衛生学会の発展と口腔保健の確立のために,ご協力のほど,よろしくお願い申し上げます.
一般社団法人日本口腔衛生学会とは
本会、一般社団法人日本口腔衛生学会(Japanese Society for Oral Health)は口腔衛生学の進歩と発展を図り、もって国民の健康と福祉の増進に寄与することを目的(定款第3条)として設立されている。1952(昭和27)年に口腔衛生学会としてスタートし、1980(昭和55年)に日本口腔衛生学会(Japanese Society for Dental Health)と改称した。2008(平成20)年に有限責任中間法人として法人化を行い、2009(平成21)年に一般社団法人へ移行した。本年(平成23年)で60年目を迎え、学会英語名称の変更を行った。
本会はそのために次の事業を行うことになっている(第3条)
- 学術大会の開催
- 研究発表会,講演会および講習会などの開催
- 機関誌その他の刊行物の刊行
- 学会認定医制度等に関する事業
- 調査ならびに合同研究
- 国際交流に関する事項
- その他本法人の目的を達成するために必要な事業
一般社団法人日本口腔衛生学会 定款 (PDFファイル 221KB)
会の構成や会員数(平成23年9月30日現在)
1)理事数:60名(うち常任理事:15名)
| 理事長 | 神原正樹 |
|---|---|
| 副理事長 | 宮﨑秀夫 安井利一 |
| 常任理事 | 荒川浩久 安藤雄一 磯﨑篤則 伊藤博夫 金澤紀子 川口陽子 鶴本明久 花田信弘 深井穫博 眞木吉信 森田 学 山下喜久 |
| 監事 | 桜庭幸夫 武者良憲 |
理事一覧 (PDFファイル 127KB)
2)評議員数:136名
評議員一覧 (PDFファイル 190KB)
3)会員数 名誉会員:21名 正会員:2,425名 賛助会員:15社 合計:2,461名
賛助会員一覧
- サンスター
- ジャックス
- ジーシー
- 花王
- 日本ゼトック
- モリタ
- ビーブランド・メディコ・デンタル
- ヨシダ
- 昭和薬品化工
- ヒョーロン・パブリッシャーズ
- 医歯薬出版
- 小林製薬
- ワカモト製薬
- 江崎グリコ
- ライオン
- デンツプライ三金
4)口腔衛生学会認定医:277名
5)学術大会・総会
- 2012(平成24)年5月25~27日
第61回日本口腔衛生学会・総会(学会長:荒川 浩久・神奈川歯科大学教授) - 2013(平成25)年5月22~24日
第62回日本口腔衛生学会・総会(学会長:牧 茂・松本歯科大学教授)
過去の学術大会・総会一覧 (PDFファイル 312KB)
6)委員会
- 将来問題検討部会(担当 安井利一)
- 学会ありかた委員会(委員長 八重垣 健)
- 法人推進委員会(委員長 尾崎哲則)
- 自己評価委員会(委員長 鶴本明久)
- 選挙管理委員会(委員長 委員の互選により選出)
- 社会保険委員会(委員長 平田幸夫)
- 倫理委員会(委員長 尾崎哲則)
- 学術部会(担当 花田信弘)
- 齲蝕委員会(委員長 花田信弘)
- 地域口腔保健委員会(委員長 深井穫博)
- 歯周病委員会(委員長 森田 学)
- 政策声明委員会(委員長 安藤雄一)
- 禁煙推進委員会(委員長 埴岡 隆)
- 編集部会(担当 宮﨑秀夫)
- 編集委員会(委員長 宮﨑秀夫)
- 口腔保健情報部会(担当 眞木吉信)
- 広報委員会(委員長 安藤雄一)
- フッ化物応用委員会(委員長 眞木吉信)
- 国際交流委員会(委員長 千葉逸朗)
- 用語委員会(委員長 小関健由)
- 会計部会(担当 伊藤博夫)
- 会計委員会(委員長 伊藤博夫)
- 教育部会(担当 山下喜久)
- Lion Award選考委員会(委員長 川口陽子)
- 認定医委員会(委員長 磯﨑篤則)
- 指導医委員会(委員長 磯﨑篤則)
- 歯科衛生士委員会(委員長 日野出大輔)
- 地方団体委員会(委員長 鶴本明久)
- 教育委員会(委員長 山下喜久)
- 歯科疾患実態調査解析評価委員会(委員長 安藤雄一)
7)地方団体
- 北海道口腔保健学会(幹事長 千葉逸朗)
- 東北口腔衛生学会(幹事長 廣瀬公治)
- 甲信越北陸口腔保健研究会(幹事長 宮﨑秀夫)
- 口腔衛生関東地方研究会(幹事長 安井利一)
- 東海口腔衛生学会(幹事長 磯﨑篤則)
- 近畿・中国・四国口腔衛生学会(幹事長 神原正樹)
- 九州口腔衛生学会(幹事長 埴岡 隆)
8)機関誌 口腔衛生学会雑誌(J. Dent. Health)
年間5号発刊
9)国際交流
韓国のKorean Academy of Dental Healthと姉妹提携
毎年交互に代表を派遣交換
10)社会に対する活動
- 口腔衛生の動向を4月に1回発行(医歯薬出版)
- 声明「今後のわが国における望ましいフッ化物応用への学術的支援」
(2002年9月13日、第51回総会採択) - 声明『禁煙宣言「たばこのない世界を目指して」』
(2002年9月13日、第51回総会採択)

