喫煙は喫煙者本人はもとより周囲の非喫煙者の全身の健康に悪影響を及ぼすことが、数多くの科学的根拠により明示されている。口腔保健の面からも、喫煙は口腔がんや歯周病のリスク因子であることが証明されており、歯の喪失との関連性も認められている。また、喫煙者の多くは、歯周治療、インプラント処置や抜歯後の創傷治癒などの予後が不良であることが指摘されている。さらに、無煙たばこの使用が、口腔にとって高い危険性があることが明らかにされている。しかし、喫煙問題に対する本学会員や口腔保健医療従事者の認識は十分とは言えず、口腔保健医療機関における喫煙対策も遅れており、また、国民への情報提供も不足している。
一方、口腔保健医療従事者が喫煙対策に関わる利点として、以下のことが挙げられる。
一般社会では喫煙対策への関心は高まっており、WHOは「たばこ対策」を最優先課題として取り組み、また、わが国でも、健康日本21の「たばこ」や「歯の健康」、そして健康増進法等において、喫煙対策の重要性が謳われている。
このような背景をもとに、日本口腔衛生学会は、「たばこのない世界」を目指して、積極的に喫煙対策を推進することを宣言する。