一般社団法人 日本障害者歯科学会

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第26回一般社団法人日本障害者歯科学会総会および学術大会レポート

広報委員会作成

 平成21年10月30日(金)・31日(土)・11月1日(日)と名古屋の名古屋国際会議場にて、愛知県心身障害者コロニー中央病院歯科部長の石黒光先生を大会会長に、愛知県歯科医師会の本多豊彦先生を準備委員長に、「地域での生活支援の口腔メンテナンスを」をテーマに 2,000人を超える参加者のもとに開催されました。全体に余裕のある会場の広さで拝聴にも不便さなく、数多くの参加者の活発な質疑応答がみられました。

 広報委員会では、大会に参加できなかった会員へも学会の模様を感じてもらおうと広報委員会の各委員の分担で取材した特別講演やシンポジウムの様子や感想を掲載します。なお、取材にあたっては広報委員以外に宮城敦先生、河野正芳先生、山本愛美先生、山崎英隆先生に御協力していただきました。紙面を借りてお礼を申し上げます。

【10月30日(金)】認定医講習会

 平成21年度第2回認定医研修会が11月30日(金)愛知県歯科医師会館にて開催されました。定員400名の会場はほぼ満杯で、最初に「重症心身障害児者の内科的合併症」という演題で愛知県青い鳥医療福祉センターの副センター長の麻生幸三郎先生が講演されました。

 重症心身障害は重篤な運動障害、知的障害を有し、種々の合併症がみられるが、今回は主にてんかんと呼吸器疾患についてでした。てんかんの診断は主に目撃証言で、脳波や画像診断はその補助手段である。定義や分類はもちろんのこと、実際の発作の状態を画像で示され大変分かり易い内容でした。作家のドストエフスキー自身がてんかんであり、その状態を「白痴」という小説に書いているが、それを単純部分発作から全般性強直間代発作に移行したなどと分析されていました。また、医者であるウエストが息子のおじぎをするような症状をランセットに掲載して助けを求めたことなども興味深いものでした。

 呼吸器疾患については誤嚥性肺炎が最大の問題で、現在は胸部CTが単純X腺撮影では見逃されやすい心臓の裏側の肺炎を診断できる。誤嚥を起こした症例を数例紹介され、食形態から経管栄養までの対応を示されました。また、喉頭軟化症についても説明され、その症状は睡眠時より覚醒時に強いなど勉強になるものでした。

 会場から「喉頭挙上術などの外科手術は行わないのか」という質問に対しては、「今日は内科的な講演ですが喉頭軟化症では口腔外科で外科的な処置が行われており、適応にもなりうる」との回答でした。

 次いで、「自閉症への対応―行動変容法と笑気吸入鎮静法の併用―」という演題で、愛知学院歯学部小児歯科学講座障害者歯科特殊診療科の教授の福田理先生が講演されました。自閉症児が苦手なこととして、ことばで説明を聴いて理解すること、イメージや想像をすること、目に見えないこと、見通しをもてないことなどを挙げられた。逆に受け入れやすいこととして、習慣化やパターン化したこと、目で見て理解できること、興味をもてることなどが挙げられ、具体的な対応が示された。シェーピング法などのトレーニングもスモールステップで行うこと、また、前提として痛みを与えないように無痛の局所麻酔が原則で、特に母親との信頼関係が重要で笑気を併用した方が協力を得られやすい場合があるとのことでした。

 質疑応答では、「治療前のトレーニングは2、3回でわかるものなのか。笑気を使う時期はいつからなのか。」という質問には「笑気は単治など簡単な治療から1、2回行って観察し、使用時期については「発達段階より検討するが、発達年齢が3、4才では笑気の成功率が高くなり、就学後は治療できる確率が高くなる。」とのことであった。また、「問診のみで最初から笑気を使って治療にはいることもあるのか」に関しては「笑気が有効そうな場合は最初から使用する」とのことでした。

【10月31日(土)】開会及び総会

 平成21年10月31日(金)の9時からA会場の白鳥ホールにおいて、第26回有限責任中間法人日本障害者歯科学会学術大会の開会式と会員総会、日本障害者歯科学会振興会総会が行われました。

最初に第26回日本障害者歯科学会総会および学術大会の大会長の石黒光先生から開会のあいさつがあり、今回の大会のテーマは、昨今の高齢社会への変化に伴い障害者の世界でも障害者本人、保護者の高齢化が問題となっており、高齢化した障害者を支援するためにも「地域での生活支援型の口腔メンテナンス」をテーマにした趣旨のごあいさつがありました。

 会員総会では、森崎理事長の開会のあいさつの後、愛知学院歯学部小児歯科学講座障害者歯科特殊診療科教授の福田理先生が議長に推薦され、森崎理事長と柿木会計理事より会員動態、平成21年度事業報告、会計報告、一般社団法人化に伴う定款変更報告、平成22年度事業計画、予算報告が行われました。

 時期役員報告では平成22年度、23年度の役員は、選出理事13名の石黒光、一戸達也、植松宏、小笠原正、緒方克也、柿木保明、玄景華、重枝昭広、福田理、宮城敦、向井美惠、妻鹿純一、森崎一治郎と、推薦理事12名の猪狩和子、石井里加子、江草正彦、木下憲治、白川哲夫、篠塚修、鈴木あつ子、筒井睦、芳賀定、平塚正雄、八若保孝、樂木正美に監事の斎藤俊、長谷川清彦(敬称略)の27名が報告されました。次期理事長には向井美惠先生、次期副理事長には緒方克也先生、妻鹿純一先生が就任されます。

 引き続いて、25回日本障害者歯科学会総会および学術大会(長崎)の実績及び決算報告が行われ、2,028名の参加があったことと322題の一般演題の発表が行われたことの報告がありました。

そのあと、次期大会長の植松宏先生から、第27回日本障害者歯科学会総会および学術大会(東京)が平成22年10月22 日(金)から10月24日(日)の日程で、東京の江戸川区の「タワーホール船堀」で「高齢社会における障害者歯科医療」をメインテーマに開催予定であることが報告されました。(写真3)そして、第28回大会長の緒方克也先生からの福岡での準備状況の報告後、北海道医療大学の五十嵐清治先生から第29回大会は北海道で開催予定であることも報告されました。

 そして、向井認定委員会委員長より平成21年11月以降の認定医および認定歯科衛生士、指導医、臨床経験施設の動静が報告され、以上の報告後、冨田かをり先生と高橋賢晃先生の2名に日本障害者歯科学会優秀論文賞の表彰と贈呈が、拝野俊之先生と青柳暁子先生にIADH研究奨励賞の表彰と贈呈が行われました。

特別講演Ⅰ 「これからの地域療育のありかた」

 特別講演Ⅰは、白鳥ホール(A会場)において、大会1日目の早朝にもかかわらず多くの参加者を得て、豊田市こども発達センター長で精神科医師である高橋脩先生がご講演されました。

 本講演では、我が国の障碍児(高橋先生のスライドでは全て障碍と表記されていました)に対する地域療育に関して、これまでの歴史、現在直面している課題、さらには今後の支援のあり方について述べられました。以下に内容を要約いたします。

 1970年代までは施設療育が主流でしたが80年代前半にかけて地域で障碍児の発達を支援するシステムが整備され、発見 →診断→療育 という専門家主体の指導・訓練モデルが確立されました。しかし、90年代後半になると、発達障碍の出現、支援対象児の増大、発見の早期化などの新たな課題が出現し、従来モデルでは対応出来ない局面を迎えました。発達障碍児は近年、自閉症、ADHD、多動などが広く認識されると共に増大しましたが、早期に発見され、適切な療育を受けることで知能が上昇した報告も多く認められます。今後は全ての子どもが等しく、継続的に受けられる支援システムを地域療育の新しい形として追究する必要があります。これを実現するためには、発見→療育→診断という保育モデルに転換していくことが重要です。障碍児の早期発見には、歯科領域では1歳半健診は大きな意義を持つと言えます。実際、障碍児を持つ親の7割は子どもが0~1歳のうちに何らかの症状に気付いていますが実際に診断される者の多くは5歳~就学後であり、その間療育を受けていないケースが多く存在します。これらのギャップをいかに埋めていくかが最重要課題であり、育児、発達支援を早期に行えるよう、親への支援指導を充実させることも急務です。支援システムを効率よく機能化させるために専門制のヒエラルキーを確立することが重要であり、障碍児および保護者に希望を持てることばを発信し続けることが我々専門職に就いたものの使命であると最後に強く述べられました。

 障碍者ひいては全ての子どもの幸せのために今我々は何をすべきか考えさせられる機会を頂き、聴講していた者の多くが深く感銘を受けた講演となりました。

特別講演Ⅱ 「ケースワーカーみたいな弁護士―裁判における障がい者の人権―」

 特別講演は、森崎市冶郎先生を座長に弁護士・北海道障害者人権ネット事務局長である西村武彦先生を講師として行われました。

 内容は、障がい者に関わる弁護士の現状をはじめ、現在取り組んでいる事案、過去に経験した裁判について「成年後見制度」を中心に具体的な内容を交えながらお話されました。また、裁判の資料として「障害者歯科」の論文を引用したことも触れられました。

 「成年後見制度」は、虐待されている障がい者の保護を行うため、後見人・保佐人・補助人を置くという民法上の制度です。西村先生は、「障がい者は自己決定を保証してもらえず、就労問題、健康・医療問題、支援について自分で判断することが容易ではない。そのために弁護士の立場からコーディネートし、生活の安定を目指すことが必要」とご自身が後見人となっているそうです。西村先生の障がい者と対等に向き合い支援していきたいという思いが伝わってきました。

 最後に自閉症とのコミュニケーション、救急蘇生、マスコミの報道についての質問があり、ていねいに回答していただきました。また、店頭には置いていない西村先生の著書「障害のある人と向き合う弁護」という本の紹介があり、講演終了後にたくさんの方々が購入していました。今回、弁護士という視点から障がい者との関わり方、法律などの私たちが普段聞けない話題を通して、医療・福祉以外に障がい者に関連する様々な分野との連携の大切さを実感しました。

ランチョンセミナー2 「病棟勤務看護師への口腔ケアに関するアンケート調査と
誤嚥性肺炎患者における口腔ケアの評価」

 土曜日のランチョンセミナーでは、済生会松阪総合病院歯科口腔外科部長の佐藤耕一先生の地元である三重県の特産物を紹介し、参加者の食欲と心を掴みながら、嚥下障害のある方の4割以上が誤嚥性肺炎の既往を持つという高齢者の実態を基に、医科の病棟でも口腔ケアの重要性に対する認識が急速に増してきているというお話で始まりました。

 病棟勤務看護師199名を対象に行ったアンケート調査の回答数は161名(回答率80.9%)。その結果からは、口腔ケアの必要性は強く認識(75%)し、多くの看護師が取り組み(99%)、更に充実させるために指導を受けたい(50%)と考えている一方で、十分な時間をかけられていない(5分以下78%)実態が浮きぼりになり、歯科衛生士を含めた病棟全体での取り組みが必要と解説されました。また、誤嚥性肺炎患者30名の発熱頻度に対する口腔ケアの効果を検証した結果に関しては、口腔ケア単独での評価は困難とした上で、何らかの効果はあるとの認識を示しました。

 最後に、地域における口腔ケアの提供は歯科医師・歯科衛生士の努力だけでは不可能であり、地域における歯科医師の役割は口腔ケアの必要性の啓発・実施者の養成であり、今後も地域支援型口腔ケアの構築を推進していきたいとまとめられました。

市民公開フォーラム
「障害児・者の日常生活に取り入れる音楽療法の実際―療育から口腔機能の育成までー」

 市民公開フォーラムとして「障害児・者の日常生活に取りいれられる音楽療法の実際」が開催されました。講師は音楽療法士の加藤恵子先生と歯科衛生士の栗木みゆき先生のお二人でした。前半は音楽療法を11年間継続する障害児のケースを例に、音楽で人との関わり、達成感を感じ、音楽を通して訓練(練習)を楽しみ、音楽を通して新しい環境に適応する可能性が出てくるなど、何事も継続することができるようになる過程が紹介されました。

 後半は講師のお二人で結成されたグループ「ミュータンズ」のコンサートがありました。参加者全員で「口腔機能の向上」を、音楽を通じて実践し、楽しい時間を過ごしました。自分も日常生活で張りつめていることに気づき、音楽の力の大きさに感動しました。

 ところで、私自身、訪問歯科診療に行っている特養でも入所者に対して音楽療法を行っている場面を見ていたので、少なからず音楽療法士の活動を知っているつもりでしたが、今日の「コンサート」を体験して、改めてその可能性を知らされました。できましたら、学会会員の皆さんも、ぜひどこかで体験してみてください。

 最後に長年、障害者歯科学会に関わってきましたが、「市民公開フォーラム」は初めて参加しました。素晴らしく良い企画と思います。それぞれの学会開催地で、色々なかたちで我々の活動を知っていただくことが必要だと感じ、本当に良い時間を過ごせました。

懇親会

 懇親会は10月31日(土)の18時から名古屋国際会議場の4階のレセプションホールで大会準備委員長の本多豊彦先生の司会のもと行われました。来賓挨拶では、日本歯科医学会会長の江藤一洋先生、愛知県歯科医師会副会長の渡辺正臣先生、第2回日本障害者歯科学会大会長で名誉会員の糸山昇先生(名古屋)の祝辞をいただき、乾杯では愛知県心身障害者コロニー副総長近藤薫先生から、昭和51年に第4回の日本障害者歯科医療研究会が愛知コロニー講堂で開催された当時を御存知で、その当時の参加人数の規模を思い返すと当日のその発展ぶりに目を見張るものがあり感慨深いとのお言葉をいただきました。

 宴は名古屋名物の手羽先やきしめんなどをほおばりながら進行し、アトラクションでは本学会の認定医でもあり、半田歯科医療センターの赤崎知彦先生のピアノと奥様の赤坂真由美さんのボーカルを中心としたジャズ演奏がありました。奥様の赤坂真由美さんはライブハウスなどに出演されたり自身のCDを出されていたりとプロのジャズシンガーの方で素敵な音楽と演奏に酔いしれた懇親会となりました。

【11月1日(日)】教育講演Ⅰ「障害者の高齢化と医療的対応」

 11月1日(日)午前9時よりA会場(白鳥ホール)にて愛知県心身障害者コロニー中央病院副院長の吉田太先生の講演がありました。最初に「およそ生物界で障害者とともに生きるのは《ヒト》だけである。それ故に我々は人として最も誇りにして良い仕事に携わっていると言って良いであろう」という初代所長、村上氏廣先生の言葉の紹介があり、続いてコロニーの紹介、その中にある高齢化が進む障害者支援施設「養楽荘」における医療対応、成人自閉症患者の特性と対応、医療連携に想うことの順に話が進みました。

 急速に進行する知的障害者の高齢化に触れ、特にダウン症、脳性麻痺患者の歩行障害、活動性低下などの老化徴候が40代、50代では歴齢に比べて顕著であるのに対し、自閉症では若々しい人が多く、また「養楽荘」入所者の疾患で一般の高齢者との違いは低ナトリウム血症、甲状腺機能異常、貧血が多く見られるが、酒たばこと縁のない規則正しい生活をしているために高脂血症は少ない。急速に進む障害者の高齢化に伴い脳血管障害、虚血性心疾患等の生活習慣病、重症感染症、悪性腫瘍等疾患の多様化などコロニー内の病院だけでなく、地域の病院で診るという考えが必要で、そのための実りある医療ネットワーク構築に向けて地元医師会、医療現場などに働きかけをし、特に医療スタッフ同士の顔が見える機会を大切にしている。医療側、患者側の問題を解決するために、医療側の事情、患者側の気持ちが理解できる中立の「通訳」がいるとスムーズに運ぶのではないか、などを強調されました。

教育講演Ⅱ
「障害者歯科医療における人材育成問題への私見―とくに、地域医療に係わる人材の育成についてー」

 教育講演Ⅱは、11月1日の日曜日の10時10分から、A会場において妻鹿純一先生を座長に、初代日本障害者歯科学会理事長の上原進先生に講演いただきました。最初に、「私見だけども」と、何度も念を押されていたのが印象的でしたが、上原先生独自のお考えから今後の障害者歯科の人材像について話されていました。

 まず、障害者の定義に関してイギリスやアメリカの考え方と日本の考え方の比較に始まり、認定医制度、専門医制度などについても解説していただきました。

 今後の障害者歯科を担う人材育成に関して、方法論としては口腔保健(歯科医療)センターを広域と生活圏型に分けて考えられ、広域の口腔保健(歯科医療)センターが地域の歯科医師を障害者歯科の担い手として育成、支援するべきとのお話でした。その際、一番重要なのは個々の歯科医師の職業倫理であり、個々が身に付けた障害者歯科をとおして地域に還元するという、責任感と使命感に裏付けられた意識構造をもつことが重要だとのことでした。

 昨今の歯科界では、インプラント、審美歯科など一昔前には一部のニーズだった領域が発展をとげました。しかし、医療の原点に返って、地域にすむ障害者の口腔保健を担うといった倫理観を中心にお話を聴けたのは斬新で、今一度気を引き締めなおす良い機会の講演拝聴となりました。

歯科医師会共同企画シンポジウム「地域で障害者歯科医療を担う人材の育成を考える」

 教育講演Ⅱに引き続いて、重枝昭広先生、小川直孝先生の座長のもと、丸山健先生、星野周二先生、服部清先生、谷口学先生の4名のシンポジストのプレゼンテーションの後、教育講演Ⅱで人材育成について講演された上原先生も登壇され、地域それぞれの特色をもった人材育成や、障害者の口腔保健医療の実際について討論されました。

 座長の小川先生からは、愛知県での障害者歯科研修システムのご説明があり、そのシステム受講者の丸山先生からその経験のお話や、自院での自閉症の患者さんの受け入れなど臨床例を交えてのお話が聞けました。

 星野先生からは、作業所でのイベント活動などをとおして障害者に触れ、垣根をなくす取り組みのお話があり、服部先生からは、静岡での健診参加型研修を中心とした、かかりつけ歯科医の育成ではなく協力に関する取り組みのご紹介がありました。

 谷口先生からは吹田市での取り組みのお話があり、他の地域と異なる点は、口腔保健センターの新設よりも、作業所、施設などの障害者歯科健診をとおしてかかりつけ歯科医を充実し、地域で可能な部分と困難な部分を明確化し、できない部分は高次医療機関に紹介することで、障害者の十分な受け入れ体制が可能になり、その結果の実績を示されながら障害者の口腔保健の向上がはかれたお話が聞けました。その際、自院で可能かどうかの判断、困難な場合の連携先の確保と機能した連携、この単純なルールが守られるだけで障害者にとって受け入れてもらいやすい地域になるとのお話が印象的でした。

 討論後、会場からは追加意見や質問も出ましたが、ある、過疎地域の先生から「自院では対応が困難な患者さんで、近隣に紹介できるような高次の医療機関がない場合はどうしたらよいか」という質問には、谷口先生から、「対象者が多数の場合には行政の反応は鈍いが、個々の対象など数が少なければ行政は対応してくれると思う。是非、行政に連携先や補助など相談してみてはどうか」という回答が得られました。

 今回のシンポジウムの感想としては、地域それぞれに必要としている障害者歯科医療のニーズやサービスがあり、歯科医師側や行政も提供できる環境や資源などの問題もあり、一律に人材育成の王道はなく、上原先生が講演でおっしゃっていたように職業倫理をしっかり持ち、社会に少しでも貢献するという理念のもとに努力していくのが必要だと感じました。

ランチョンセミナー2「地域で支える在宅医療 ―医科と歯科の連携―」

 横浜市旭区で開業され在宅診療をされている岡田先生は、個々の負担軽減、在宅医療の質の向上、高次医療との連携を模索して現在、会員数50名にもなる"在宅医ネットよこはま"の母体となる集まりを仲間の医師4名と立ち上げた。よりよい在宅医療を支えるには、在宅医療の適応・安定した介護・連携体制の充実・チームアプローチの4本柱が必要であることを力説されました。特に介護を含めた生活基盤が安定していなければ十分な医療行為を供給することが出来ない。先生は、歯科がかかわって摂食に著しい改善を見た2例を挙げられました。どちらも歯科関係者以外は口の中を診ることが少なく、また診てもよくわからないという典型例であり専門職がかかわれば困難ではない例でした。日ごろから歯科医師との連携をとっていて口腔内にも関心のある医師の存在が大きかったといえます。

 後半は診診連携について地区の医師会員と歯科医師会員に対しておこなったアンケート結果をお話されました。診診連携に医科より期待することとして嚥下障害(脳外科)・顎関節症(整形外科・耳鼻科)発達障害児(小児科)在宅歯科診療の普及(内科・外科)など多くの要望が寄せられました。歯科からは一人の患者を協同で診ていくための情報の共有、双方向のやり取りをスムーズに行いたいなどが挙げられました。さらに医科歯科診診連携の在宅医療のシステムを一般診療の中にも取り入れていったらどうかという提案をされました。

 最後に先生は地域医療連携システムを円滑に進める潤滑剤として「顔の見える連携」(居酒屋での交流など)が大事だということを強調されて講演を締めくくられました。岡田先生のソフトなお人柄と巧みな話術であっという間の一時間が過ぎました。

歯科衛生士会共同企画シンポジウム
「地域で生活する重度障害者の口腔ケアを考える」

 大会2日目午後にA会場で開催された本シンポジウムでは、訪問看護師の土田春美先生、介護福祉士の生駒理恵さん、ALS 患者である川西正彦さんがそれぞれの立場から地域で生活する重度障害者の口腔ケアについての考えをお話しされました。川西さんは人工呼吸器を装着されているため、奥様が川西さんの言葉を代読されました。

 担当された小児の在宅支援の事例を紹介された土田さんも、利用者への口腔ケアに関するアンケート結果をもとに現状を報告された生駒さんも、ご自身の体験を踏まえて、口腔ケアがALS患者の生活の質を高めるためにいかに大切であるかを語られた川西さんも、在宅の重度障害者が安全に安心して生活するために口腔のケアは欠かせなく、歯科専門職の知識とスキルを求めているものの、連携をとるための職種間の情報は不足していて、障害のある方やそのご家族も口腔ケアの情報がなく必要性の理解も充分でないのが現状だと述べておられました。

 会場からは、シンポジストが話された現実に衝撃を受けたとの声がありました。さらに情報提供の仕方や連携システムの実践例の紹介等の発言もあり、今後に向けての具体的提言がなされました。最後に座長が、歯科医療職への期待にこたえるためには、教育や連携のためのツール、情報提供のシステム作りが重要であるとまとめられましたが、その中で、現場での顔の見える関係の中で作られる人と人とのつながりにおける情報が大切と強調されたのが印象的でした。

閉会式およびプロフィラックス賞

 福田先生の司会で第3回日本障害者歯科学会プロフィラックス賞の発表が行われました。妻鹿先生より、選考の経緯等が報告されたのち、末留加織先生(加古川歯科保健センター)が発表された「高機能自閉症に対するアニメキャラクターを活用したマッチングによる支援の一例」(演題番号 I-C-08)の受賞が発表されました。

 プロフィラックス賞のスポンサーであるタカラベルモント株式会社様の挨拶に続き、森崎理事長より表彰状が、タカラベルモント株式会社より副賞が受賞者に授与され、その後に受賞者である末留加織先生のスピーチが行われました。

 閉会式は大会準備委員長である本多豊彦先生が檀上にあがり、無事閉会式が執り行われました。インフルエンザなどの危機管理対策にも苦労されたというお話でした。本多先生のほっとされた表情が印象的でした。

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